第161章 富弥について、話す
葉月の最後の言葉に富谷は驚きつつ、何とか理解しようと試みる。
「…みんな若くてイケメン…か…そうだね、そうなると年齢は俺が知ってる歴史とは、かなり違うね。それに葉月さんのこどもの父親が、石田三成…彼は最期があまり良くない死に様だけど、その辺りは違うんだ?」
「死に様がどうなるかはわかりませんけれど…織田信長様が生きてるという事は関ケ原の戦いは起こりませんから、違う歴史が動いていると思います。こちらに戻ってから歴史の本を読みましたが、特に歴史に変化はないようですよね…だから、ここで知る歴史と、私が行った時代は違う流れを辿っているのかな、と思いました」
「…ちょっと頭がこんがらがっているんだけど、それで、俺が着物を着てウエイターみたいな事をしていた夢って何か関係あるの?」
「…あるんです、富谷さん。それも、すごく、重要です」
葉月の真剣な顔に、富谷はまたも驚くが、弥生に一度話しを中断させられる。
「ねぇ、話しも大切だけど、お料理食べない?冷めちゃうし、私、お腹空いたわ」
「…あ、そうだね、じゃ、話しはデザートの時にして、食べよう。葉月さん、これ、俺がこの店でお勧めする肉料理だよ」
「あ、はい、じゃあ、いただきます」
勧められた料理をナイフとフォークで切り分け、口に運ぶ。
葉月は戦国から戻ってきてしばらくは、現代の料理の味が濃く、口に合わなくなって久しかったが、今はすっかり元に戻り、外食も普通に出来るようになっていた。
戦国で肉を食べる事がほとんど無かったので、しばらく肉が食べられなくなっていたのだが、ぱくりと食べ咀嚼して「ほんと、柔らかくて美味しいです」と答える。
富谷は、しかし、食べながら葉月の話しを思い出し、必死に理解しようと考えつつ食べているため、食事の味がよくわからない状態に陥っているようだった。