第161章 富弥について、話す
「…いわゆる平行宇宙…パラレルワールドってやつ…か…?」
富谷は眉を寄せて難しい顔をすると、弥生が言う。
「そうなの、富谷くん。葉月は、戦国時代へ行ってしまったの。でも行った時代は戦国は戦国でも私達の知る歴史の流れとは違っていて、死んでいるはずの人達が生きていて、更に私達の知る武将の年齢も違うんだって」
「年齢も違う…」
ますます眉をしかめる富谷に、葉月は続ける。
「あのう、そうなんです、年齢も違うんです。みんな若くてイケメンなんです」
「…若くてイケメン…」
更に困惑する表情を富谷は見せる。
「私が行ったのは1583年で、本能寺の変の一年後の年代です。その頃だと明智光秀様は結構おじさんのはずですが、私が会ったこのかたは、どうみても20代後半か、せいぜい30代前半の妖しい雰囲気が魅力の、若くてかっこいいかたでした」
「…明智光秀がそうなら、他の人はどうなの…?」
とりあえず、といった体で他の武将の様子を富谷は聞く。
「ええと、織田信長様は私、一度しか会ってないのですが、やっぱり同じくらいで、人の上に立つ容貌をした、自信と威厳に溢れた人です。それから豊臣秀吉様。この人は、優しく人当たりも面倒見も良い、誰からも好かれる容貌の持ち主です。それから伊達政宗様。好戦的で野性的な魅力に溢れた、女性からとても人気の高いかたです」
葉月の話しは続く。
「有名な徳川家康様。せいぜい20代中頃の凛々しく爽やかな印象のかたです。それから石田三成様。家康様と同じくらいで、まだ若いのに色っぽくて、頭が良くて、優しくて…実は三成様が、私のこどもの父親なんです」