第161章 富弥について、話す
「…いったい、どういう…」
ようやく声を発した富谷に、葉月は続ける。
「驚きますよね、とにかく続けます。えーと、タイムスリップして、戦国時代へ行ったのですが、そこは歴史で習う戦国時代と違うんです。何故なら、本能寺の変で織田信長が殺されておらず、むしろ生きている事になっていました」
「…本能寺の変…」
呆気に取られて富谷は単語しか話さない。
「そうです、本能寺の変で明智光秀が織田信長を死に追いやるはずですが、明智光秀はちゃんと味方で、織田信長の左腕として働いているんです」
「…明智光秀、織田信長…歴史が違う…?」
「あ、ええと、時空がゆがんでしまったらしく、違う歴史が動いてしまいました」
葉月は、急いで違う歴史の中へ入りこんでしまった事を付け加える。
「…タイムスリップした先が戦国時代。でも俺達の知る戦国時代とは違い、助けられた織田信長が生きている時代…」
富谷はざっくりと、聞いた事を反芻するように口を開いた。
「そうなんです。他に、私は会った事ありませんが、上杉謙信や武田信玄は病気で亡くなったと言われてますが、私の行った歴史の中では生きているんです」
「ちょっと待って…俺が習った歴史では、本能寺の変より前に上杉謙信や武田信玄は亡くなっているよね?それが生きていたって事?」
「はい、そうです。でも私もこの人達に直接会った事はないので、本当かどうかは知りません」
実は信玄には茶屋の客として会っているのだが、そこまでは知らない葉月だった。