第161章 富弥について、話す
富谷は詳しく質問されて内心驚くものの、答える。
「ああ…そう言われてみればそうかも。こういう建物じゃなくて、外だったかな…色はわからないけれど、箱のようなところに座って、テーブルは無くて、座っている横に皿や湯のみを置いていたかなぁ」
富谷が言う店の内容に、葉月は確信する。
「あと、富谷さんは着物を着ているって事ですけれど、髪型とか着物の形とか、どんなのか覚えてますか?」
「髪型とか着物の形、ねぇ…うーん、どうだったかな…自分だ、という認識はあるけれど、悪いけどそこまで覚えてないなぁ。でもどうしてそれを知りたいのかな?」
料理が並べられ、三人でそれぞれ取り分けをして皿を渡しながら、富谷は自分の姿までは覚えていないと答える。
そうか、とちょっと葉月はがっかりするが、それでも話し続ける。
「あの…笑わないで聞いてもらえますか?姉はこの事は知ってます」
「ん?何だろう?」
富谷は不思議そうな顔をして、葉月と弥生、二人の顔を見る。
「えーと、実は私、つい最近まで行方不明になっていたんです」
「…行方不明?どうして?」
いきなり物騒な言葉が出てきて、富谷は驚く。
「驚くな、信じろ、というほうが無理だと思うのですが…タイムスリップして、戦国時代へ行っていたんです」
葉月の発言に言葉が出ず、無言で葉月を見る富谷だった。