第159章 重なった、時
本を読みながら安土城の廊下を歩く三成がいる。
「あ、三成くん、危ない」
舞が廊下を歩く三成を見掛け、慌てて声を掛けたが間に合わず、思い切り安土城の柱に頭をゴンとぶつけていた。
なのに、三成本人は本を読みながら歩いていた為、柱にぶつけたと気付かず、柱に向かって頭を下げている。
「大変失礼しました。おけがはありませんか?」
その姿を少し後ろから見ていた家康は、顔を背けているが肩が震えていて、笑っているのがわかる。
舞は柱に謝る三成の側へ寄り、ぽんと肩を叩く。
「ちょっと、三成くん、柱に謝ってどうするの?」
舞に声を掛けられ、はっと気付く三成。
「…あ、私はいったい…」
「柱にぶつかって謝ってたよ?」
「柱、ですか…?どなたかにぶつかったのではなく…?」
舞の前でぽかんとする三成に、舞は仕方ないな、と苦笑する。
「もう、違うよ。ほら、本を読みながら歩かないで、まっすぐ前を向いて歩こうよ」
「そうですね、舞様のおっしゃる通りです」
持っていた本を閉じ、三成はぶつけたところを擦る。
「何を熱心に読んでいたの?」