第21章 織田信長
そして大きな広間の下段、その端っこに葉月は、畳に額を擦り付けるほど頭を下げていた。
遥か上段に信長が脇息(きょうそく)によりかかり、上段よりの中段に秀吉達が座っていた。
「挨拶のしかたはさっき習ったけど、こんなんだとは…」
現代は考えられない身分の差、というのをつくづく痛感する。
とにかく声が掛かるまで頭をあげるな、と言われているので、ずっと畳とにらめっこだ。
ガチャン、と、刀掛け台から刀を取る音が離れたところからし、誰かが歩み、畳を擦る音が聞こえてきた。
歩みは葉月の目の前で止まった。
「貴様、顔をあげろ」
すぐ近くから低い声が降ってきて、葉月はゆっくり顔をあげた。
無造作で乱れる艶やかな黒髪。
意志の強い、真紅の瞳。
きりりと芯の強い表情をした織田信長が、すぐ目の前で葉月を見下ろしていた。
『うわあ、なに?織田信長もこんなイケメンなの!?』
また新たに、目の前に登場した、強気な雰囲気を発するイケメンに、びっくりする葉月だった。
その強い気をからだ中から発する信長が、突然鞘に入った刀を突き出してきた。
受け取る。
ずしん。