第154章 現代の逢瀬
「そうなの?血の病気って一生治らないと思っていたけれど…」
「治療法が確立されてきているからね。中には珍しいタイプで予後(よご)の悪いものもあるから、そういうのを研究してみたいと思っていたけれど、その辺りは変な話し、継ぐ家があるから勤務医に比べたら本当に恵まれててね、だからやっぱり家を継ぐ為の科を選ばざるを得なかったって事」
富谷の話しは医療に全く詳しくない弥生にもわかりやすく、話しに聞き入ってしまった。
最後のデザートまで二人は食べ終わり、弥生は今度こそ、と言う。
「この間払ってもらったから、今日こそ私が払うよ」
「おんなの人に払わせる訳にはいかないよ。俺、病院と家との往復で、お金を使う暇が全くないから、こういう時に使わせてよ」
何とも周囲が聞いたらうらやましい発言をし、結局富谷が支払いをしてくれた。
「ごちそうさま」
弥生がそう言うと、車に乗り込む前に富谷が言う。
「俺はこの後、弥生さんを食べるから、まだごちそうさまじゃないな」
「…ばか」
弥生は軽くにらんで富谷に言うと、富谷は笑いながら続ける。
「いいでしょ?弥生さんのあの時の顔がまた見たいんだ」
「…もう、ばか」
弥生がもう一度言い、富谷はまた助手席から弥生へキスをする。
車内にキスする音だけお互いに耳に入り、富谷は弥生のスカートの中にそっと手を入れ、ひざから腿を撫で回す。
「…ん…はぁ…」
弥生の軽い吐息が漏れ、富谷は唇を離し弥生の耳元で囁いた。
「さ、行こうか、二人きりになろう…」