第154章 現代の逢瀬
前回と同じレストランに来た弥生と富谷。
またてきぱきと富谷が料理を注文し、弥生は葉月が言っていた、戦国時代に富谷と同じ顔をした富弥という人物の事を思い出し、何か引っ掛かりが無いか聞いてみる。
「あの、富谷くん?すごく変な事を聞くんだけど、戦国時代に興味有る?」
「戦国時代?」
唐突に聞かれた質問に目をぱちくりさせる富谷に、弥生は頷く。
「それって織田信長や豊臣秀吉が居た時代の事だよね?
歴史はあまり得意じゃないんだよね…あれ?でも、戦国か…」
変なところで言葉を区切った富谷に、何かあるのかと弥生はまゆを寄せる。
「いや…何か最近夢を見るんだよね…戦国なのか時代はわからないけれど…」
首を傾げる富谷に、弥生は目を大きく見開く。
「それ、どんな夢?」
「え…どんなって…はっきり覚えてはいないけれど…
何か店みたいなところで、俺が菓子や茶を振る舞っているんだよね」
「店みたいなところで、菓子や茶を振る舞う…」
「そう、確か着物を着ているんだよなぁ。着物なんて成人式でも着ていないし、時代劇見る余裕も無いし、どうしてなんだろうとは思うよ」
弥生は、とりあえず夢の内容を葉月に伝えておこうと考える。
関係無いとは素人で言い難い、葉月の言う、富谷と富弥という人物がそっくりな事と名前が同じ事は、葉月が戦国に戻る為の何か布石になるかもしれないし、ワームホールについて煮詰まっている弥生にとっては、小さな情報は一つでも欲しいのだった。