第153章 誘い、誘われ
解析が進まない弥生は、出来ない事にいらいらをつのらせている。
-こんな数式見た事無いけれど猿飛くんが証明した、時空を歪め、時を超えるワームホールを見付けなければ。
-葉月は何も言わなくなったけれど、きっと内心、早く戦国時代に戻りたいのはわかっている。
大きくため息をついた弥生はパソコンの前でずらりと並んだ式を見ながら、佐助の頭脳に感心するばかりだった。
『あの子…どうして戦国時代に行っちゃったのかしら…猿飛くんの頭脳なら、将来ノーベル賞獲れそうなのに』
片手で髪の毛をわしわし掻き回しているところに、スマホが鳴り、富谷からの電話が入った。
「…はい、上杉です」
一瞬迷うものの電話に出ると、富谷のおっとりした声が耳に入る。
その瞬間、おっとりしているものの、おとことして目の前にいた先日の事を思い出し、こくりと息を呑んだ。
「弥生さん、富谷です、今良いですか?」
「いいよ」
「明日、空いていたら、また食事をどうですか?」
「…その後もついてるの?」
嫌味のように食事の後の事も聞いてみる。
一瞬間を置いて、同意した富谷の声がするが、声に甘さを伴っているように聞こえるのは、弥生の気のせいか。