第152章 日々を過ごす
「…三成、さま…」
涙が止まらない。
『もう、戻れないの?嫌だ、戻りたい。あの優しい声を聞きたいよ…』
膝を抱えて、一人で電気を点けない暗い部屋で、しばらく静かにしゃくりあげる。
でもいつまでもそうしている訳にはいかない、と涙を止めて、大きく息を吐く。
『おねえちゃんもがんばってくれているんだ、わがまま言っちゃいけない。我慢しなくちゃ。私には成がいるし、三成様の分までしっかり育てなくちゃいけないんだから…』
息を整えていると、食べ終えたらしい弥生の足音が聞こえ、隣の自室へ入って行く音が聞こえた。
茶碗を洗おうと、そっと部屋を出て下へ降り台所へいくと、弥生は自分の食器は既に洗っていて、きちんと片付けていた。
「おねえちゃん、食器、片付けてくれたんだ」
一人で心を落ち着かせる為にお茶を淹れてゆっくり飲み、台所を片付ける。
そして両親の部屋へ行き、成におやすみのばいばいをさせ、自室へ連れて行く。
「成、おやすみしようね」
「ほげっ」
「よし、成、また明日な」
「成ちゃん、また明日ね」
「ほげほげ」
一人前に返事をする成に、両親は目尻を下げっぱなしで喜んでいた。