第152章 日々を過ごす
「ほげほげっ」
「はいはい、おむつだね」
成がほげほげ言うと、おむつなのかおなかが空いたのか、区別がつくようになっている葉月は、だいぶ慣れた手つきでおむつを交換した。
「成はちゃんと教えてくれていいこだねー」
抱き上げて頬を擦りよせると、成は「ほげ」と得意げに返事をする。
首もすわってきて、産まれた頃のへにゃへにゃ感はなくなり、そして葉月もすっかり母らしくなり、定期検診や予防接種もきちんとこなしていた。
「おとうさんにはまだ会えないけどね、ちゃんと必ずいつか会わせてあげるからね、待っててね、成」
「ほげ」
「よしよし、お返事していいこだねー」
脇下に両手を差し込み立たせてみると足のちからはあるようで、その場でぴょんぴょんする成の姿を見て、両親は感心しきりだった。
「やっぱりおとこのこねー。あなた達はこの時期、こうじゃなかったわよ。もうふにゃふにゃで、こんな風にぴょんぴょんしてなかったもの」
「足のちからが相当あるんだなぁ」
そしてその姿をビデオに撮ってご満悦な様子の両親も、もうすっかり当たり前の生活になっている。
『成の父親が誰か、聞かなくなったなぁ。ずっと誰だ、誰だってうるさかったのに』
成にベタ甘な両親を見て、胸がチクリと痛まないと言ったら嘘になるが、両親からいつか成を取り上げる日が来るのも確実な事を考えると、今を大切にしようと葉月は思う。