第151章 心を伝える
本当の事をはっきり言う舞に、信長は笑みを浮かべた。
「そうか、飲みにくかったか」
舞の顔を見つつ、信長はグラスの中の酒を一息で飲んで続ける。
「貴様、せっかく元の時代へ戻れたのに、どうしてここに戻ってきたのだ?」
舞は一瞬言葉に詰まるものの、正直に伝える。
「信長様、貴方というかたを知ってしまったから、です」
「…ほう?」
片眉だけをあげ、信長は興味深い表情をする。
「こちらに来たばかりの私なら、現代に戻れたら、もうこちらに行こうなんて思いませんでした。でも、こちらで信長様始め皆さんと過ごしてみて、今では皆さんと一緒にいるのが当たり前になってしまいました。
そして、先日戻った未来での生活は、正直つまらないものでした」
「…そうか」
信長は頷き、舞は話しを続ける。
「それに、私は信長様を怖いかただと、ずっと思ってました」
「ほう」
舞の続けた言葉に、信長は興味深げな表情をする。
「けれどそうではなくて、本当は愛情深いのにそれを表すのが上手ではないかた。
私はなかなかそれに気付きませんでしたが、信長様の持っていらっしゃる暖かい感情を知ってから、私は望まれなくても信長様の側に居たい、と思うようになりました」
舞は立ち上がり、信長へ近付く。