第151章 心を伝える
書庫へ行った三成を廊下で送り、舞は部屋へ入り、一休みして天守へ向かう。
『何だろう、信長様…新しい着物を作れってお話しかなぁ?』
そんな事を思いながら、声を掛ける。
「失礼します、舞です、入ってもよろしいですか?」
「…入れ」
信長の声が聞こえ、すらりと襖を開き、舞は中へ入る。
相変わらず信長の部屋は、南蛮渡来の珍しいものがあれこれ置かれており、丸テーブルの前に座る信長は、深い緋色の葡萄酒をグラスに注いで口に運んでいた。
「信長様、どんなご用でしょうか?」
舞が話し掛けると、信長はちらりと舞を見て、近くに来るよう顔を動かした。
舞が丸テーブルへ近付くと、信長は「座れ」と促し、もう一つのグラスに葡萄酒を注ぎ、舞へ渡した。
「未来にも葡萄酒は有るのだろう?飲め」
「は…はい、いただきます…」
酒の相手に呼ばれたのか、と思いながら、舞はグラスに口を付ける。
今のワインと違ったかなりの渋さに、苦々しい顔をする舞を見て、信長はまゆを寄せる。
「どうした?飲めぬか?」
「すみません、葡萄酒自体は未来にも有るのですが、ここまで渋くないので、飲みにくくて驚きました」