第148章 ワームホール
「とにかく何とかする。時間かかるかもしれないけれど、解析するから待ってて」
追い詰められつつも、自分しか頼る人のいない葉月の為に、自分ががんばらないと、という気持ちで、弥生は自分自身を鼓舞しながら言う。
「うん、他に頼る人いないし、成に予防接種打ちながら、ワームホールの出現を待つよ」
「そうそう、予防接種。大事だから、それ打って待ってて」
とりあえずこの現代で、成に予防接種を打たせるという目的を持たせ、その間に何とかしおうと決意を改める。
「葉月!来てくれる!」
そこへ母親が葉月を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おかあさん?葉月を呼んでる?」
普段、母親が大声を上げる事がない為、弥生は驚く。
「たぶん成のおむつ交換だと思う。面倒な事はしたくないから、そうなると呼ばれるの。おむつ交換までビデオに撮ろうとしたから、さすがにそれは止めてって頼んだよ」
「そんなところまで…」
ビデオでなんでも録画しようとする両親のバカっぷりに呆れ顔な葉月。
「可愛がってくれるのはありがたいけどね、バカ爺、バカ婆もあそこまでくるとあっぱれだね」
「確かにあそこまで変わるとは、私も思わなかったよ」
二人で苦笑し、肩をすくめて葉月はおむつを一枚持って、両親の部屋に居る成のところへ行こうとしたので、弥生も部屋を出て自室へ戻った。