第147章 富谷と富弥
「私、戦国時代で富谷さんにそっくりな人に会ったんだよ」
葉月の言葉に、目をぱちくりさせる弥生。
「それでその人も富弥…富山県の富に、おねえちゃんの弥生の弥で富弥さんって言うの」
「…字は違うけれど、言い方は同じ人?その人は名字じゃなくて名前?」
「そう。それに顔もそっくりでびっくりしちゃったよ」
弥生は偶然にしては偶然すぎる出来事に驚く。
「名前も同じで顔もそっくりって、生まれ変わりなのかねぇ」
弥生は床に座り、クッションを抱えてふむ、と首をかしげる。
「敢えて言うなら、こっちの富谷さんのほうが品がある感じかなぁ。お医者さんなんでしょう?おねえちゃんの事、以前から好きみたいだよ?」
葉月に言われて、弥生はどきりとするが、何気なさを装ってそのまま知らん振りをする。
「まぁ、確かに医者の家だから、不自由なく育って、その辺は落ち着いているかもね。でもそれは置いておいて、戦国の富弥さんと、こっちの富谷くんで、通じる話しでもある?」
弥生が問うが、葉月は首を横に振る。
葉月は弥生のこの態度に全く気付いていないようだった。
「ううん。富谷さんも特に戦国うんぬん言ってないでしょう?」
「何も聞いてないねぇ。でもこれから何か思い出すなんて無いかな?何かあったら教えるよ」
「うん、お願いね、おねえちゃん」
そして、どちらからともなく、ワームホールの話しになる。
「…どういう、こと…?」
弥生の話しを聞いた葉月の口調が緊張を伴った。