第147章 富谷と富弥
弥生は両親が何をしているのか、成の写真を撮りビデオ録画をしているのだろう、と、正確に意図を理解した。
「ビデオにデジカメにチャイルドシートまで、新品の高いやつ買っていて驚いたよ」
葉月が弥生に言うと、弥生は肩をすくめて言った。
「あれで済んでるから良いよ。事故に遭っても大丈夫なように、車をベンツに変えるって言っていたんだから」
「ベ…ベンツ…」
葉月は両親の変わりように驚く。
「さすがにそこまでするなって止めたよ。だからチャイルドシートが高いメーカーのものなの。妥協してそっちにさせたの。大変だったんだから…あんたの成は金喰い虫だね」
茶化すように弥生は葉月に言った。
「別にそこまでして欲しいなんて言ってないよ。ありがたいけどさ、おとうさんたちが勝手にやってるんじゃないの」
葉月はその言葉に、少しむくれて反論するが、すぐ聞き直す。
「あ、そうだ、おねえちゃん、聞くの忘れていた事があるんだけど」
葉月の問いにワームホールの事かと身構える弥生だが、質問は違っていた。
「あのさ、富谷さんっておねえちゃんの知り合いなんでしょ?」
「…富谷くん?知り合いっていうか、大学生の時、同じサークルに所属してたよ」
思っていた事と全く違う質問に、肩透かしをくらった弥生だが、今、富谷の事を話題にされるのも、弥生には何となく気まずい気分だったが、葉月はそんな事は知らない故、何とも思わない体で聞いてきた。