第146章 退院
ありがたいが、葉月はおそるおそる言う。
「あのさ、おとうさんもおかあさんも、誰の子かわからないから、産むの反対って言っていたよね…?」
二人は一瞬顔を見合わせ、笑い出した。
「まぁ確かに言ったけどねぇ、こんな可愛い孫なら誰の子でも構わないわぁ」
「俺もだ。こんな可愛い子がずっと家にいるのなら、むしろ誰の子かわからないほうがいいからな」
「…そ、そうなんだ…」
「さ、早く家に戻りましょう。もう退院手続きは済んでいるの?」
「うん、朝のうちに会計通したから終わってる。ナースステーションに挨拶して終わりだよ」
母親が成を抱っこし、父親と葉月で荷物を持ち、ナースステーションで挨拶をし、産院を出る。
車には確かにチャイルドシートが設置してあり、それも高いメーカーのものなので、葉月は驚く。
「このシート、高かったでしょう?どうしてこんな高いもの買ったの?」
「うちが気を付けていても、他の車にぶつけられるかもしれないだろう?成が怪我をしないように、良いものを買っておいたんだ。それに、ほら、ドライブレコーダーも付けたんだぞ」
確かに車の運転席付近に見慣れぬものが付けられていた。
両親の飛び抜けた思考に、葉月はついていけず、大きくため息をついて成をチャイルドシートに寝かせると、成は軽く「ほげぇ」と一泣きし、両親が泣き声を聞いた、と大騒ぎした。