第144章 弥生と富谷
「ん?俺の専門?代謝科。父親が循環器で、兄が消化器なんだ」
「代謝科って何するの?」
弥生が問う。
「一番多いのは糖尿病患者を診る事かな。今以上に悪くならないようインスリンや服薬指導、それに大学病院では、栄養士による食事指導をしているよ」
「ふぅん。ちなみに循環器と消化器は?」
「消化器は胃や腸を診る科で、循環器は心臓だね。うちは内視鏡設備も無いから、何かあると全部他の病院へ紹介状を出すんだ」
「へぇ…」
「兄の奥さんも医者で、専門が同じ消化器でね、実家がやっぱり開業医なんだ。だから将来は兄夫婦がそちらの医院を継ぐ事になるから、俺がトミーを継ぐ事になっているんだ。
だから今は糖尿病患者も多いし、俺は最終的な事を考えて代謝科を選択せざるを得なかったって訳」
「へぇ…つまり開業医でやっていける科をご家族で選ばれてるって事?」
「そう。家のクリニックはかかりつけ医として、普段通ってもらうところだからね。
全員違う科を専門にしているから、俺が研修医を卒業すれば、家のクリニックで代謝科か糖尿病科を掲げられるようになるって事」
「へぇ…すると将来は富谷くんは一国一城の主って事なんだね」
弥生はそう言いながら、出てきた水を一口、口にした。
「そう」
「ああ、わかった。下級生の子達が富谷くんにきゃーきゃー言っていたのは、富谷くんが医者を目指しているのを知っていたし、将来開業医として家を継ぐのを知っていたからなのか!」