第143章 待ち合わせ
ほぼ指定した通りの時間に大学病院へ到着すると、入口にスマホを持って立つ富谷の姿を見つける。
「お待たせ。乗り心地は保証しないけれど、どうぞ」
運転席から声を掛けると、スマホを仕舞った富谷が助手席へ乗り込んできた。
「久し振り。元気そうだね、弥生さん」
富谷のおっとりした声に、変わらないな、と反対に思う弥生。
「富谷くんのほうが変わらないね。研修医なんて忙しくて、変わっちゃったのかと思っていたけれど、全然変わってないね」
はは、と破顔した富谷は問う。
「どんな風に変わっていると思った?」
「うん、時間に追われてもっとぎすぎすした感じになっているかなって。でも大学の時のままだね」
どこに行けば良いのか聞くと、富谷は病院からわりと近くのレストランを指定してきた。
「この辺じゃ一番だと思うよ」
「了解」
車を出発させながら、弥生はとにかく礼を言った。
「あ、妹の件ではありがとう。破水してパニック起こしたのを、富谷くんが救急車呼んでくれたって後で聞いたよ」
「いや、あれはパニックになるよ。ちからになれて良かったし、無事に生まれたんでしょ」
「うん、無事に生まれて、見事我が家に、バカ爺、バカ婆、バカおばが出来上がったよ」