第142章 面差し
はっと目を開けると産院のベッドで、いつの間にか眠って夢を見ていたらしい。
「それにしても縁起の悪い夢だったな…」
ふと気付くと涙の跡があり、寝ながら泣いていたらしい。
時計を見るとせいぜい30分程度寝ていただけだが、葉月には嫌なうたた寝だった。
「そういえばおねえちゃんに、ワームホールがいつ開くか、聞かなかったな…あと富谷さんの事も聞くの忘れてた」
ぼんやりしていると、小さいベッドから、成がほげほげ泣き出す。
葉月はもたつきながらおむつを交換し、抱っこして乳首を含ませる。
口を動かすが母乳はまだろくに出ないので、ミルクを作り、哺乳瓶を含ませると、作った少量のミルクを成は飲み干した。
「全部飲んだの、えらいねえ」
葉月は褒めながら背中をさすり、げっぷを出させる。
抱っこをしながら成の顔を見ていると、うっすら目を開けた。
目の色は薄い紫色だった。
まだほとんど見えていないけれど、目を開けた事で、はっきりと三成の姿を捕らえた。
「ほくろはないけれど三成様にやっぱりそっくりだ!」
葉月は思い、三成に成を早く見せたいと思うが、なかなか思う通りにはいかない事をこの後思い知る。
しかし、今は身二つとなって、愛する三成の子を産んだ事で、幸せな一時を葉月は味わうのだった。