第140章 成(なる)
「おとうさん、産むのは許さないって怒ってたのに」
「だから言ったでしょ、産んじゃえば絶対変わるって。おかあさんはどっちでもって感じだったけれど、やっぱり産まれたら孫可愛いってうるさいしねぇ」
そんな事を二人で話していると、両親がやって来た。
「あら、弥生、貴女も来ていたの?」
「早く見に行けってうるさかったの、おとうさんとおかあさんでしょ?」
嫌そうな顔をして弥生が言うが、知らん振りして母親が紙袋をごそごそ掻き回す。
「ほら、おとこのこってわかったから、おとこのこ用のベビー服、いろいろ買ってきたわよ」
「…うっ」
葉月がのけぞりそうなほど、大量のベビー服をベッドの上に散らす母親。
確かに性別がわからないので、最低限の衣類しか用意はしていなかったが、その三倍はあろうかと思うくらいに、母親の趣味で選んでこられてしまった。
「ほらーこれなんか可愛いでしょ?あかちゃん用のポロシャツ!」
小さな水色のポロシャツを広げてご満悦な母親に、葉月は何も言えなかった。
弥生がつんと肘でつついてきたが、葉月は苦笑するしかなかった。
「ほんと、バカ婆になっちゃったね、おかあさん」
その言葉に弥生も苦笑した。
そこへ新生児室から個室にあかんぼうがやってくる時間となり、看護師が成のベッドを押して運んできた。
「あらあら、ちょうど大勢いらしているのね、成ちゃん、良かったね」