第140章 成(なる)
産院の葉月の部屋へ行く前に、弥生は新生児室を覗いた。
数人のあかちゃんがすやすやと眠っている。
「ちいさーい」
並ぶあかちゃんを見て、弥生はつぶやく。
その中で葉月の産んだ子は、ひときわ可愛らしい顔に見えるから不思議だ。
既に名前の書いている子も居て、葉月の子にも『成』と一文字書いてあった。
「もう、名前を付けてる…?」
弥生は更に口に出す。
石田三成の『成』なのだろうか?
「葉月」
ノックをして部屋に入ると、葉月に聞く。
「あかちゃんに、もう、名前付けたの?」
葉月はにっこりして言うが、その表情は今までと違い、穏やかな母の顔だった。
「遅くなるとおとうさんが勝手に決めそうでしょ。それに考えてたんだ、名前。
おとこだったら、三成様の『なり』を取って『なる』にしようって」
「ふーん、そうなんだ」
「可愛いでしょう?三成様にそっくりだよ。髪の毛の色もまだわからないし、目も開けたの見てないからわからないけれど、あの顔は三成様の顔なの。だからきっと三成様みたいに綺麗な顔立ちなんだろうなって思う」
にこにこしながら『なる』について葉月は話した。