第139章 電話
葉月が無事出産を終えた夜、弥生は帰宅して母親から全てを聞き、電話をする。
「はい、富谷です」
相手は昼間、店で破水した葉月を救急車を呼んでくれた富谷だ。
「お久し振りです、上杉弥生です。今、お話ししても良いかな?」
「ああ、弥生さん、元気ですか?」
富谷からおっとりと了解の返事が返ってくる。
「さっき親から聞きました。妹がお世話になったようでありがとう、助かりました」
弥生が礼を述べると、富谷からいやいや、と返事がくる。
「いや、救急車呼んだだけだからたいした事はしてないよ。それで妹さん、無事に生まれたのかな?」
「うん、ありがとう。無事に出産したって。私はまだ会ってないけれど、両親が言ってる」
「そう、良かった。おめでとう。でも妹さん、結婚していたんだね」
「え?ああ、まぁ…ね。それじゃ、本当に今日は助かりました」
弥生はそう言って電話を切ろうとするが、富谷から提案される。
「ああ、弥生さん、久し振りに一緒に食事でもどうですか?」
「え…うん…良いよ。でも研修医でしょ、時間取れるの?」
「まぁそれは…なかなか大変なので、お互い空いている時間で、いかがですか?」
まさか同級生が、店で困った妹を助けてくれるとは思わなかったな、と思いつつ、弥生は御礼も兼ねて直接会わないとならないか、とめんどくさそうに思うのだった。