第138章 孫
分娩室の外で待っていた、付き添いの母親はあかんぼうの声を聞いて、産まれた事を知る。
しばらくして綺麗になったあかんぼうは、母親の目の前に連れて来られる。
自分の娘葉月には似ていない、とすると、相手の男性に似ているのか…
産まれたばかりのあかんぼうの顔は、母親の知らない向こう側を映し出していた。
あかんぼうは新生児室へ連れて行かれ、後産の処置の終わった葉月はぐったりしたまま部屋へ戻ってきて、そのまま疲れて眠ってしまった。
そこへ父親も急いでやって来た。
眠る葉月に付き添っても仕方ないので、新生児室の前へ両親は移動し、産まれたばかりのあかんぼうを二人で見る。
「葉月に似ているのか?」
父親の問いに母親は答える。
「違いますね、葉月の生まれた時と顔が違うので、相手の男性に似ているようですよ」
「…そうか…男なんだな」
「そうですね…」
複雑な初孫を見つめる両親だが、産まれた孫本人は何も悪くない。
産まれたばかりにしては整った顔立ちの小さい顔を見て、早くもバカ爺、バカ婆を露呈させる二人だった。
「うちの孫が一番可愛いですねぇ」
「ああ、そうだな。あの子が一番可愛いな」