第19章 軍議の後
「若くて剣の使える娘となると、上杉の軒猿とは考えられませんか?」
家康が意見を出し、秀吉も答える。
「外には出していないし、与えた部屋も見張っているが、今のところ、全く上杉との接触はない、と報告はあがっている」
「猫の皮を被っている可能性も、まだまだ捨てきれないしな。
まあしっかり見張れよ、秀吉」
光秀は他人事のように言う。
「そうは言うが、どうせおまえも別口にあの娘のことは調べてるだろうが」
秀吉が言い返す。
「よく、わかったな。しかし、未だ全く上杉との繋がりがとれていない」
ようやく三成がああ、と一人で納得する。
「どうした、三成」
秀吉が聞き、皆が三成を見る。
「そのかた、先日、秀吉様の御殿で見掛けたかたでしょうか。
中庭で木刀持って何やら形を決めてました。
一つ一つの形がきちんと決まっていて、所作が美しかったです」
にこにこして話す三成に、皆が驚いた。
「おんなのことを話したことのない三成が、初めて特定のおんなのことを口にしたか」
「いや、それ、木刀振り回してたから目についただけじゃないですか」
政宗がへぇと感心し、家康は否定する。