第135章 もう一人の『とみや』
『おねえちゃん、実はモテるんじゃない…』
内心、弥生に悪態をつく。
常々弥生は「私がモテる訳ないでしょ、理系のおんななんてそれだけで避けられるんだからね。頭のキレるおんなは、おとこは嫌がるものなのよ!」と葉月に言っていたので、富谷のようなそこそこの男性から好かれていて、何が不服なんだろうと首を傾げる。
『もっと筋肉がついた人が好みなのかなぁ。おねえちゃんの好みの男性って、そういや聞いた事ないからわかんないや』
「あ、えーと、それで今日は姉に会いにいらしたんですか?」
富谷に聞くと、いやいや、と富谷は片手を横へ振って違うと意思表示した。
「そうじゃなくて頼まれてお菓子を買いに来たんですよ。こちらのお菓子は上品でお持たせに良い、とうちの母が好んでいるんです」
「あ、そうなんですね、ありがとうございます。どれをお包みしますか?」
「こちらとこちらを5個ずつ箱に入れてください。あとこちらを3個。家に持ち帰るので箱には入れなくて良いですよ」
「かしこまりました。お待ちください」
よっこらせ、とかがんで菓子をショーケースから取り、箱に詰めて包装する。
その姿にようやく富谷は気付く。
「あれ?妹さんって結婚されてました?」
「はい?」
包装しながら聞かれた質問の意図がわからず問い返す。