第135章 もう一人の『とみや』
中には選ぶのに困って質問をする客もいるので、丁寧に答える。
「年代によりますけれど、年配のかたにはこちら、若いかただとこちらでしょうか。
あとどなたにも好んでいただけるのはこちらですね」
「そう…じゃあこれとこれ5個ずつ、お願いします」
「かしこまりました」
箱に入れて包装するのも久し振りで、葉月には楽しかった。
『お客さんとの対応は、茶屋でもやってたんだよね。ここでやっていたのがあそこで役立つとは思わなかったけれど』
戦国の茶屋での仕事を思い出し、待ってもらっていた最後の客へ声を掛ける。
「大変お待たせいたしました。お決まりでしたらおっしゃってください」
「ん、ああ…」
顔を上げた男性の顔を見て、葉月は驚いて声を上げる。
「富弥さん…!!なんで、ここに…!!」
「は?」
シャツにジーンズという恰好の若い男性は、いぶかしげに葉月を見た。
「どうして俺の名を知ってるんですか?貴女に会った事ありましたっけ?」
「え…違う人…?」
葉月は混乱する。
『えーと落ち着け、落ち着け。富弥さんは戦国の人だから、ここにいるのは、末裔の人?』