第135章 もう一人の『とみや』
「…うーん、これ、そうかな…?」
トイレから出てきた葉月は首を傾げる。
「ま、そのうちはっきりするか」
たまたまかも、と、気にしない事とし、近所へ散歩に出掛ける。
大きなおなかを抱えて、近所をぐるりと歩くのに、ちょうど良い天気だった。
近くの公園で遊ぶこどもとその母親の姿を見て、自分もそのうちああなるんだな、と思いを馳せる。
『でも、大きくなる姿は、おとうさんとおかあさんには見せられないんだよね…タイムマシン電話みたいなもので、過去と今をつなぐものがあれば良いのにな…』
親子を微笑ましく見ながら公園を通り過ぎ、家へ戻っていく。
店をちらりと外から覗くと、相変わらずそれなりにお客が入っていて、お菓子を買い求めている。
大変そうだな、と裏から入り、客対応をしている母親に声を掛けた。
「おかあさん、少し手伝おうか?」
「あ、本当?悪いけれど少しお願い。おかあさん、後ろから不足分持ってくるから」
エプロンではなく割烹着を身に着け、三角巾を頭に被り店頭に出る。
葉月が店頭に出ると、入れ替わりで母親は作ってある菓子を取りに奥へ行った。
「お待たせいたしました。お決まりでしたらお声掛けください」
菓子を選んでいる客に話し掛け、決まるのを待つ。
「どれが人気かしら?」