第132章 記憶に留める
宴が終わって三成は御殿に戻り、教えてもらったスマホを起動させる。
フォンという音がし、しばらくして起動画面が出てくる。
「確かここ、でしたね」
ぽちぽちと教わったアイコンを押すと、動画の画面が出てきて、葉月が出てきた。
着物ではなく、現代の服装をした葉月は、大きくなったおなかを撫で、既に穏やかな母のような顔をしている。
「…葉月さん」
『三成様』
三成は懐かしい声を何度も繰り返し聞く。
「早く、戻ってきてくださいね」
最後に出てきた弥生は葉月と姉妹だけあって似ているが、葉月より快活な印象を、三成は受けた。
「弥生さん、お願いします、葉月さんを私の許へ…」
姉妹の動画を何度も見て、すっかり一晩で充電を使い果たした三成は、スマホを翌日舞に返却するが、その表情は晴れ晴れとしていた。
「大丈夫です。ちゃんと姿と声を、私の記憶に留めましたから」
「それなら良いのだけど、さすがに一晩で充電使い切るとは思わなかったから驚いたよ」
舞に言われ、三成は少し恥ずかしそうに言う。
「記憶しようと何度も何度も見ていたら、途中で真っ黒になってしまいまして」
途中で充電切れを起こしたらしい。
使い方を教えたけれど、夢中になって動画を見ていた三成の姿を想像して、舞は微笑んで言う。
「葉月さん、あかちゃん連れて必ず戻ってきてくれるから待ってて。大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
間もなく、出産予定日を迎える葉月はどうしているだろうか…