第130章 残された二人
弥生はパソコンを開き、計算式を見つめる。
正直見た事の無い式に、佐助の頭の良さを改めて見せつけられた思いは否めない。
「この式はこのままにして、でも分解して、どうなっているか考えてみるかな…」
弥生も卒業してから、ここまで深く突き詰めて物事を考える事はなく、しかし、久し振りの頭脳戦にやる気を覚え、解読してみせる、と一人息巻く。
そして葉月は、三成の文を見返し、佐助と舞が無事戦国のあの時へ戻り、武将達と再会出来ている事を祈るばかりだった。
「三成様…絶対戻るからね…この子と帰るからね…」
言葉がわかったのか、ゲシゲシと、おなかの子が蹴りを入れてきた。
「あ、いたたたた…わかったから、わかったから。きみもおとうさんに会いたいよね?」
葉月はおなかを撫でながら話し掛けた。
-いつも横を向いているからエコーで見ても、性別が未だにわかっていない、きみ。
-おとこでもおんなでも、三成様に似ていると良いな。
-三成様の紫を数滴落とした灰色の髪と、紫の瞳。
-それらを持って生まれてくれると嬉しいな。
-きみの名前も考えてるんだよ?おとこなら、おんななら。
ゲシゲシと中で蹴っ飛ばしてくる腹を擦りながら、葉月は苦笑する。
『三成様にもこの蹴りを入れてくるところ、見せたかったな…』
葉月は部屋を見回し、出産の為用意したかばんの中に、三成の文もいれた。