第130章 残された二人
「消えた…」
弥生は佐助と舞が居た場所を見つめて、呆然としていた。
二人が消えた後、ワームホールは急速に小さくなり、消えた。
「ちょっと…これ、夢じゃないよね…葉月…」
弥生は葉月に改めて問う。
「夢じゃないよ、おねえちゃん。佐助さんと舞さんは戦国へ戻ったんだよ…」
葉月も二人の消えた方向を見たまま、感慨深げに口を開く。
「…おねえちゃん」
きっぱりとした声で、おなかを触りながら葉月が言う。
「私も絶対戻りたいの。今じゃなくて、戦国で生きていくって決めたの。
だからお願い、絶対この子と戻らせて。お願いします」
お願いします、と頭を下げて葉月は弥生へ頼んだ。
「今更改まらなくてもわかっているよ」
弥生は葉月の望みを叶えられるよう、次のワームホールを現出を早く計算しないと、と思う。
しかし気掛かりが弥生にはある。
葉月には確認していないが、産まれてくる子の予防接種の事だ。
戦国の世で流行り病にかかったら、赤子にはひとたまりもない。
だから予防接種を受けておくべきだろうけれど、それについては、葉月は全く考えていないように見受けられる。