第126章 姉妹の会話
「おねえちゃん、どうしよう」
検診から帰ってきた葉月が焦っていた。
「おなかの赤ちゃん、逆子が直らないの、どうしよう」
これでは戦国時代に戻れないのではないか、とおろおろして涙を浮かべて弥生に訴える葉月に言う。
「落ち着きなさいって。まだ産み月まであるんだから、横向いて寝るのを続けなさい。
ぎりぎりで直る事もあるっていうから」
そういって葉月の妊婦向け雑誌の表紙で、ぱしんと軽く肩を叩く。
「これでも読んで落ち着きなさい」
「これ読んだら余計に不安になるよ。だって出産経験の特集読んだら、みんな下から産んでるもん」
「でも帝王切開の人も居るのは居るでしょ?」
「そりゃ居るけど、術後痛くて動けないなんて事ばっかりだもん。
反対に不安になるよ」
「そりゃおなか切ってるんだから、普通に下から産んだ人とは違ってすぐには痛くて動けないでしょ」
「だから不安になるだけなの!」
ぽい、とその雑誌を放り投げる葉月に、今迄になかった幼稚さと我儘に気付き、もしかしたら葉月の本質はこうであって、今迄出してなかっただけなのかと弥生は思った。
「あんた、そんなに幼稚だった?もっと大人しいと思ってたんだけど、今になって結構我儘も言うよね?」
弥生に言われ、葉月は初めて気付いたように目をぱちくりさせる。