第125章 姉と妹
弥生は必要なものを佐助に貸し出し、佐助が書いた家族宛ての手紙を、適当な場所から投函した。
佐助はデータをパソコンに入力し始め、ベースが出来次第、弥生に計算方法を教えると言ってきたので、それが出来るのを待つ。
和菓子屋の長女で跡取りと思われていたけれど、完全な理系頭で菓子屋の跡を継ぐ事なんて考えもせず、大学で宇宙工学を学び研究し、宇宙開発に関わる会社で働く事にした時、やはり頭の固い父親が大反対してきた。
でもそれを親が受け入れたのは、妹の葉月が、店を自分が継ぐと言ったからだった。
特にこれと言って好きな事も無く、祖父母や親の言ったレールを大人しく歩いてきた葉月は、文句も言わず当たり前のように代わりに店を継ぐと言い、将来どこかの菓子屋の次男と結婚して跡を継いでもらう、と両親は思い込んでいた。
ところが、何があったのか、戦国時代に飛んでしまい、葉月曰くイケメンな石田三成と出会い恋をし、こどもまで作って現代に戻ってき、でも絶対戦国時代に戻ると言い張っている。
今迄の葉月とは全く違う感情の表しかたに、両親も戸惑っているのを感じる。
しかし、両親には葉月は戦国時代に行きました、なんて事言えないし、でも、話しを聞いていると本当としか思えない。
「全く我が妹ながら、どういう人生を歩んでるのやら」
弥生は車の運転席で大仰にため息をつき、おなかの大きくなった葉月を思い浮かべる。
「それにしてもねぇ…こっちで彼がいたって聞いた事ないからなぁ…あんまり思いたくないけれど、石田三成とが初めてだったって事かな…」
戦国時代のおとこ、それも武将であれば、相当乱暴にされそうな感じもするが、葉月の言動からは戻りたいと言ってるし、手紙の内容も物静かなものという事は、全員が全員、ちからづくでおんなをモノにする人物で無い、という事なのかな、と弥生は思うしかなかった…