第118章 幸村へ告げる
佐助はワームホールの細かい観測と計算を行う為に、安土の隠れ家で過ごしていた。
「この間のホールの動きはこう来てる…だから次の予測は…いや、この計算ではこの動きはしないから…」
何枚もの紙に、手書きで計算した式を書き散らす佐助。
それを見た、行商という名の安土へ偵察に来た真田幸村が驚いたのは言うまでも、無い。
「なんだぁ、これ。どれだけ散らかしてるんだよ」
「ああ、悪い、幸村。それ全部触らないでくれる?そんなのでも順番に並べてあるんだ」
「はぁ?おまえ、時々、本当に訳のわからない事を始めるよな、一体今度は何をしているんだ?」
幸村は、紙が散らばった隠れ家を見て、呆れる。
「ごめん、ちょっと待って。この計算が終われば…だから、こっちの式を当てはめて…」
「は?」
佐助は途中から自分の世界に入り込んでしまい、幸村の言葉を聞かない。
仕方ないか、と佐助の集中力は半端ない事を知っている幸村は、終わるまで待つ事にする。
幸村は無理やり少しずつ隙間を作り、そこへ座り込み、買ってきた羊羹を一人で食べ出す。
佐助は幸村の行動に全く気付かず、ずっと書き込みに集中していた。
幸村が羊羹を食べ終えると同時に、佐助も大きなため息をついて計算を終えたようだった。
「ん?幸村、いつ来たんだ?」