第117章 姉、弥生
弥生はすっとんきょうな声を上げる。
目の前にいる葉月は、もともと親や祖父母の言う事をきちんと聞いて育ち、剣道も祖父に言われて始めたような、大人しく、大人からすれば扱いやすい娘だった。
おまけに美人と言っても良い容姿に、自慢の妹と弥生は周囲に話していたくらいだ。
ところが、本人の言う事を鵜呑みにすると、戦国時代へ何故か行ってイケメンな戦国武将達に会い、あの石田三成の子まで作って、現代に戻ってきたというのか。
「あんた…脳神経の検査、受けてないよね?
ちょっとドクターに話して受けさせてもらってくるよ」
「打ってない、正常だよ。頭おかしくないよ。本当に石田三成の子だもん。
それにね、私、石田三成と結婚するから、豊臣秀吉の養女になったんだよ」
「あのねぇ…」
弥生は呆れて葉月の顔を見る。
すると、ドアをノックする音がし、隣の部屋の舞がそっと顔を出した。
「舞さん!」
葉月はその女性の名を呼び、弥生は母親の言っていた、葉月と一緒に倒れていた女性の事を思い出し、こんな綺麗な人と一緒に居たのか、と驚く。
「あの、突然失礼します。私は舞と言います。
葉月さんの言う事は信じられないと思いますが、本当なんです」
「言う事って…戦国時代へ行ってイケメン武将に会って、石田三成と子を作ったって事?」
弥生は非常に簡潔に『葉月の言う事』を呆れつつ言う。
「そうなんです、何故なら私も同じところに居たからです」
舞の言葉に、弥生はますます目をぱちくりさせる。
「どういう、事…?」
舞に改めて話しを聞く弥生だった。