第109章 出陣
「…葉月さん?開けますよ」
三成の声がし、襖を開ける。
へたりこんでいる葉月が顔をあげると、涙でぐちゃぐちゃになった顔が現れた。
「…葉月さん…」
「…ご、めん、なさい…泣いちゃ、いけない、んでしょう…けれど…怖くて…
みなさんが…戻ってこなかったら、と思うと…」
しゃくりながらぐずぐず言う葉月に、三成は抱き締め落ち着かせるように言った。
「心配しなくても、私は必ず戻ります。心平らかにして待っていてください」
「ど…して、必ず、なんて…言える、の…」
しゃくりながら言う葉月の背中を撫でながら、三成は更に言う。
「当然ですよ、葉月さんと私達の子が待ってますからね」
ぐじぐじな顔のまま三成を見る葉月の目に、決意を露わにした三成の紫の瞳が映る。
「…ほんと、ですか?」
「約束しますよ、必ず戻ります」
葉月の涙を拭いた三成は、涙の残る唇に自分の唇を押し付け、葉月も自分の腕を三成の首に回し、ほんのしばらく二人の時を持つ。
時が来て。
「ご武運を」
三成の一軍が出陣して行った。