第108章 戦の前
出陣の支度をほぼ終えた三成が、葉月に会いに来たのは、それから半月以上後の事だった。
「おつかれさまでした。戦支度ってわかりませんけれど、ずいぶん大変なのですね」
葉月は、自分が作った煮物や焼き魚を整えた夕餉の膳を三成に出す。
二人で夕餉を摂り、片付けてから三成にお茶を出そうとしたところ、三成の膝に葉月は座らされる。
「葉月さんの肌を感じたいです…」
三成は久し振りの葉月を抱き締め、首筋に顔を埋め葉月の肌や感触を堪能する。
そして抱き締めたまま、片手はそっと葉月の腹を撫でる。
「少し、変わりましたか?」
「はい、少ぅし出てきました」
くすくす葉月は笑いながら、少し腹が出てきた事を伝える。
「ちゃんと子が成長している証拠です」
「そうですか…」
三成はまた葉月の腹を撫でた。
「戦から戻ってきたら、どのくらいまた大きくなっているのでしょうか」
「どのくらいなのでしょう?私もわかりません。
でも三成様が無事お戻りくだされば、またこうして触って確認出来ますよ?」
「そうですね、家康様に尽力して、一日も早く終わらせられるよう致しましょう」
三成はそう言って、葉月に口付けた。
濃厚な口付けをし、唇を離した三成は切な気に紫の瞳を揺らして言った。
「子が流れたら怖いのですが、葉月さんを抱きたいです…」
「…三成様」
葉月は三成の首に腕を回して抱き着く。
「…抱いてください。無事に帰ってきてくださる、なら…」
葉月の言葉に、三成はそのままそっと葉月を横たえた。
「勿論、無事に帰りましょう…」
三成はそう言って、葉月の帯を解いて覆いかぶさり、からだを重ねていった…