第102章 変化に気付く
「こんにちは、富弥さん、すごい人気ですね」
葉月が言うと、ああ、と少し照れたような表情で富弥は言う。
「甘味屋やってる若い男は珍しいみたいでな、何だか娘達が集まってるよ」
「ほほ。でもまんざらでもない表情ですね」
竹にも言われ、頭をぽりと、照れた富弥は搔く。
「そう言われたら何も返せませんや、ま、とにかくごゆっくり」
そう言い残し、注文の品の支度をしに中へ入って行った。
葉月は羊羹を口に入れ、首を傾げた。
「どうしたの、葉月?」
春に問われ、葉月は首を傾げたまま言う。
「この羊羹、味、変わってないですよね…?」
「え?今朝ちゃんと口にしたけれど、いつもと同じだよ?」
「…そうですか…うーん、なんだろ?」
首を傾げたまま、それでも羊羹を食べる葉月に、竹はふとある事に気付く。
食べ終えた二人は春と富弥に挨拶して、店を後にして御殿へ戻る。
その途中、竹は葉月に問う。
「葉月さん、月のもの、来てる?」