第102章 変化に気付く
結局一人では反物を選べず、竹にかなり選んでもらい、買い物は終了した。
反物の数も多く、ほとんどを小袖の作りとして店に依頼し、二人は手ぶらのまま店を出、竹が甘味を食べて帰りましょうと誘ってくれたので、春の店へ行く。
「春ちゃん、こんにちは」
竹が春を見掛けて声を掛ける。
「あら、竹ちゃん、いらっしゃい。葉月もよく来たね」
「春さん、こんにちは」
二人は羊羹と団子を注文し、腰掛ける。
相変わらず富弥目当ての町娘の客が多い。
茶を運んできた春にそれを告げると、春も苦笑していた。
「そうなんだよね。まさか富弥がこんなに人気があるとはね」
富弥が他の客の茶を運んで出てくると、町娘達から黄色い声があがる。
「富弥さん!私にもお茶を!」
「富弥さん、お代わりください」
「富弥さん、羊羹、ください」
「おいおい、わかったから、順番な」
「はいっ」
富弥はふと視線を動かし、竹と葉月の姿を見付けると、二人のほうへやってきた。
「竹殿、葉月、いらっしゃい」