第2章 いきなり対峙
『無銭飲食の人かな…おばさんを助けられるかな…』
葉月は周りを見回し、自分の竹刀袋がすぐ近くに落ちているのを見つけ、そこから木刀を取り出す。
すらりと立ち上がり、木刀を左手に持ち、無言で男のほうへ歩む。
おかしな恰好をした女が男のほうへ近寄るので、男も一瞬躊躇したが、恰好はともあれ美しい部類に入る顔だちの女にニヤリとほくそ笑み、話しかける。
「なんだ、おんな。俺と愉しみたいのか?」
「……」
葉月は無言のまま木刀を構え、男に向かって静かに諭すように話す。
「貴方がどういう事で怒っているかはわかりませんけれど、
飲み食いした料金は払わないのは良くないと思いますよ?」
その言葉に反応した男は、すぐさま左腰に差している刀を抜く。
「なんだと?おんなだからといって容赦はせぬぞ!」
野次馬となっている人々がざわめいて一歩後ずさる。
葉月も一瞬刀を見て躊躇する。
『あれ、刀?本物?いや、まさかでしょう』
『この時代に刀なんか持ってたら、銃刀法違反で逮捕されるのに?』
「木刀じゃあ勝てないぜ、おんな」
男の下卑た笑いがしんとした中、響く。