第101章 変化の始まり
朝餉を部屋で食している時、本当に小さな違和感に葉月は気が付いた。
膳の皿を見るが、その違和感を引き起こしそうなものは何もない。
「気のせいか…」
食べ終わった膳を片付け、三成に選んでもらった本でくずし字の勉強をする。
「うーん、読めませーん」
一人でぶつぶつ言いながらも、絵を見て何とか読んでみる。
勉強しているうち、竹の指導の時刻となるが、竹が今日は市へ行くと告げる。
「秀吉様から、葉月さんに着物をもっと用意するよう言われましてね」
「本当ですか?着替えに一枚有ると助かるな、とは思ってたんです」
「他にも着物はあるでしょう?どうしてそれらは着ないのですか?」
以前、信長の前に出る時、三成と出掛ける時、とそれぞれ着物を用意しているが、それらは全くと言って良い程、着ている様子が無い。
「え。だって、あちらの二枚は普段着るものに見えなくて。
だからもったいなくて着られません」
「あの二枚も普段着として着て良いのですよ?」
「そうなんですか?でも普段着るならこれと同じくらいので良いです」
これ、と言ったのは今着ている格子柄の小袖。
「葉月さんは着るものにあまり執着しないのかしら?」
竹が聞くと、盛大に葉月に頷いた。