第100章 御殿で手伝う
「うーん、料理って程の料理では無いのですけど、ね」
「これ、何に漬けてるのですか?」
「お酢ですよ。お芋の色が変色しないようにするの」
へぇ、と女中達は感心する。
しばらくして酢水から引き揚げ、醤を少しもらって山芋と和えた。
「はい、一品出来た」
箸休めに出来るだろう品を作り、さて、他はどうしようかな、と考える。
その姿を秀吉が少し離れたところから見ていた。
葉月は気が付いたらすっかり女中達にも溶け込み、秀吉の御殿に以前から居るのが当然のような状況になっていた。
そういえば、着萎えた格子柄の小袖ばかり着ているな?
他に着物は持って居ないのか?
秀吉はちょうど通りがかった竹に言う。
「葉月を今、久し振りに姿を見たが、いつも同じ着物を着ているな。
他に着物は持っていないのか?嫁入り支度としても着物を持っていないと」
「かしこまりました。では市へ連れて行って、似合う反物をいくつか仕入れてきましょう」
「悪いが任せた」
秀吉は竹に任せ、婚儀の準備も始める旨、同様に竹に伝えた。