第96章 月代
葉月は月代の手を取り、頭をあげさせる。
「ちょっと、月代さん、頭をあげて、ね?」
月代の顔を覗き込み、葉月は言う。
「貴女はとても仕事熱心だと思う。だから態度を改めたら、更に良い仕事が出来る人だと思ってるの。だからこのまま絶対ここで働いてね?」
「…でも私は三成様を…」
「そんなの良いでしょ?自分の主はかっこよいほうが良いじゃない?
好きなら好きでいて良いんだよ?…でも私がいるのは知っているだろうけれど…」
「それは存じてます。女中でも好きでいて良いんですか?」
「私には人の心まで操作出来ないよ。でも、好きという気持ちは大切にして欲しいんだ」
「主である三成様を奪いにいっても良いですか?」
「あら、宣戦布告だ!良いよ、でも絶対三成様はあげないよ」
「私が色気でせまったらどうします?」
くすくす笑いながら流し目で月代が言う。
「うわ、色気でせまられたら負けちゃうから止めてよ」
葉月は慌てて月代に言い、二人で顔を見合わせて笑った。
「葉月様、私、久し振りに笑ったような気がします」
「ほんと?じゃあこれからはちょこちょこお話ししようね」
「はい、お願いします」