第96章 月代
「…私の表情はそんなに失礼なのでしょうか…」
しばらくしてぽつりと月代が言ったので、葉月は言う。
「はっきり言ったら失礼だよ?好きな気持ちと人に接する態度は一緒にしちゃ駄目。
私に冷たくするのは構わないけれど、他の人は三成様と無関係なんだから、誰にでもにらみつけていたら駄目なの」
「…そう、なんです、ね…以後気を付けます」
月代はようやく気が付いたといった体でうなだれる。
葉月は月代に言う。
「私にはその気持ちをぶつけてくれて構わないから。
だから他の人にまで冷たくしちゃ駄目だからね?わかってくれた?」
「…わかりました。葉月様にも態度を改めます」
「えーと、私は貴女にとって敵みたいなものだから、私には冷たくても良いよ?」
「…どうして私のような女中にまで、そんなに良くしてくださるのですか?」
月代が反対に顔をあげて、じっと葉月を見てきた。
「私が気に入らなければ、辞めさせてくだされば良いのでしょう?」
「辞めさせるのは簡単でしょ?でも今までここで働いているのでしょう?
だったら簡単に辞めて欲しくないから、悪いところは改める努力をして欲しいの」
「…わかりました」
月代はそう言って、深々と頭を下げた。
「今迄の態度を改めます。葉月様、ありがとうございました」