第96章 月代
舞からの質問に逃げ、三人の楽しい会合も終わりの時刻となり、秀吉御殿へ葉月は帰ってきた。
「絶対一度はお城に泊まりに来てね。佐助くんも侵入してきてくれるから」
舞は約束だよ、と葉月に言って安土城へ戻って行った。
「ただいま戻りました」
秀吉御殿に戻り、声を掛けると竹が出てきた。
「おかえりなさい、葉月さん、三成様が今日は御殿に来て欲しいそうですよ。
先程遣いのかたがいらして、言伝されていきました」
「三成様が?わかりました、すぐ支度して参ります」
部屋へ戻り、持ち物を用意して風呂敷に包み、竹に挨拶をし、三成御殿へ向かった。
「竹様、いってきます」
「気を付けていってらっしゃい」
舞や佐助と会っている時は天気が良かったが、今は曇り空になっていた。
葉月は雨が降る前に、と、急いで三成の御殿へ行った。
幸い御殿に到着した時はまだ雨は降る事はなかった。
「ごめんください」
声を掛けると、以前、忘れ物を届けた時に冷たい眼差しを投げかけてきた女中が出てきた。
「葉月様、いらっしゃいませ。三成様からお越しになるのは承っております」