第95章 三人の現代人
「今日はね、葉月さんに会わせたい人がいるんだよね」
話しを急に変えて、舞は葉月を見る。
「会わせたい人…もしかして…」
思い当たる人は一人しか居ない。
「そう、私と一緒に、飛んだ人」
だけど、ここでは自分達を知っている人がいるから、と舞の希望で他の場所へ移動する事とする。
「ごちそうさま、また来ますね」
春と富弥に声を掛け、二人は茶屋を離れる。
「また、おいでね」
春と富弥は、はい、と返事をして店を離れる二人を見送った。
その足で二人は少し離れた小高い丘へやってきた。
舞の姿を認めたからだろうか、大木の後ろから男性が姿を現したのに葉月は気付く。
「…あの人、ですか?」
「そう、早いね、佐助くん」
舞は声を掛けると、声を掛けられた男性は二人に近寄って来た。
神経質そうな細身の顔立ちだが、それは理系特有の繊細な気性を表すようなもので、眼鏡の奥の瞳は穏やかなこげ茶色を宿しており、ほんの少し口角をあげて、笑みを浮かべているようにも見えた。