第90章 猿飛佐助
「わかった。信玄様が羊羹が美味しいと言っていたところだ」
「え…信玄様も茶屋に行ってらしたの?」
「そうだ。そう言えば茶屋の娘さんが可愛くて口説こうとしたら、店主のおばさんに駄目と言われた、と言っていたな」
「…信玄様らしいわ…」
信玄様の口説こうとした姿を思い返し、つい、二人でくすりと笑ってしまう。
「そうか…俺は会った事はないけれど、その人が同じ現代から…
それでその人は現代に帰りたいと思っているの?」
「ううん、実は三成くんとそのうち結婚するの」
「三成って、石田三成さんと結婚?」
佐助は驚いて聞き直す。
「驚いたな…きみだけでなく、その人も戦国ライフをしっかり味わってるんだな」
「でも、一番味わっているのは佐助くんでしょう?」
舞はくすくす笑いながら佐助に言う。
「そうかもしれないな」
佐助も舞の言葉から、ふ、と笑みを浮かべた。
一度葉月に会ってみたい、と佐助は言い、ひとしきり話した後、帰る。
「気を付けて」
舞の声を背中に、佐助は天井裏へ姿を消した。