第89章 二人の正体
本能寺の変で、織田信長を助けて気にいられ、安土城へ連れて来られ織田家ゆかりの姫という事になった舞。
「…私より先に、ううん、同じ平成から飛ばされてる人がいたなんて…」
「私は嬉しいよ。一人でも同じところから来た人がいるなんて」
呆然とする葉月へ、そう言って舞はぎゅっと葉月の手を握った。
「舞様…」
ただただ舞を見つめる葉月に、また舞は言う。
「そういう事だから、私、本当は姫じゃないの。だから二人の時だけで良いから舞様は止めて?舞で良いよ」
「舞、さ、ん…」
様、と言いそうになり、舞さんと言い直した。
「私はね、京都に旅行に来ていて、本能寺の跡地にいたら飛ばされたんだよ」
「私は剣道の段審査で出掛けた先で飛ばされて…」
「そうなんだ。でも同じ平成出身が居て嬉しいな。
あ、そうだ、あのね、実はもう一人いるんだよ」
「…えっ、そんなに飛ばされてる人がいるんですか?」
「その人は私と一緒に飛ばされたんだけどね。次に会ったら言っておく。葉月さんに会えるようにするから、その人と会うのはちょっと待ってね」
はい、と頷く葉月。
平成から来た二人は、こうしてようやくめぐり逢う。