第89章 二人の正体
部屋の隅に置かれた葉月の鞄が目に入ったのだ。
「葉月さん…これ…」
突然舞が立ち上がり、隅に置いていた自分の鞄を持ちあげたので、葉月はしまうのを忘れていた事に気付く。
「あの、それは…」
葉月が言うより先に舞が先に口を開いた。
「もしかして、平成から来たの…?」
葉月は驚いて目を見開いた。
-どうして、織田家ゆかりの姫様が『平成』を知っているのか?
葉月の鞄を持ったまま近くへ戻った舞は、事実を伝える。
「…あのね、私も平成から来たの」
「…は?」
葉月は呆然として、一瞬耳に入ってきた言葉を聞き流し、でも何度もその言葉を反芻させ、ようやく自分の頭の中で理解する。
同じ平成から来た舞。
呆然として葉月は舞を見つめた。
「じゃあ私の事、話すね」
葉月は話し出す舞の言葉を黙って聞いていた。