第89章 二人の正体
「襖の開け閉め…」
「舞様も御殿に行かれたら、葉月さんの成果を見て差し上げてくださいね」
「…う、うん…」
どれだけ厳しい指導を受けているのだろう、舞は自分が該当者でなくて安心した。
『でも、もし、私もどなたか武将様と結婚になったら、同じようにしごかれるのかな…』
ふと、自分も同様の身になってもおかしくない、と気付く舞だった。
数日経って、舞は秀吉の御殿へ葉月を尋ねる。
やはり織田家ゆかりの姫君がいらしたとあって、こちらが優先となり勉強は中断となった。
舞が入っていくと、葉月は深々と頭を下げ挨拶をした。
「いいのよ、頭をあげて、葉月さん。今日はお祝いに来ただけだから」
「…お祝い…?」
顔をあげてぽかんとする葉月に、舞は微笑んで言う。
「三成くんと結婚するんでしょう?それをお祝いにきたのよ」
「あ、そうなのですね、わざわざありがとうございます」
舞に座ってもらい、お茶を丁寧に淹れて葉月は出す。
「ありがとう」
礼を言って、ふと、部屋を見回して、舞はドキリとした。